2012年10月31日水曜日

美は脳の中にある 3 リンゴは赤い? Beauty is in the brain 3 Is the apple red?

りんごがあります
赤く見えます
なぜでしょうか?

 

物が見えるためには
光源、対象物、眼・脳必要です







出典:「知っておきたい色の話」

1.光
 
 光はどこから来た何者でしょう
 
地球の自然光の大部分は太陽からやってきた光です
 

大気の影響のない宇宙で見る太陽は
色がなく
暗黒の背景の中で真白に輝いています
(毛利さんもおっしゃっています)

太陽からの可視光は
全波長を連続的に含んで白く見え
色がありません
白色光と言われます
エンディバーから見た太陽 (NASA提供)
 
地表に届いた太陽光の中身は
下図で示した
連続した波長分布(スペクトル)です
波長の範囲は300~3000nm(ナノメーター)です。

出典:エコサーモコート⇒

1ナノメーター(nm)は長さの単位で、1mの10の9乗分の1(10億分の1m)です。
1nmは 1mの1000分の1 (mm)の
1000分の1 (μm:ミクロンメーター)のさらに
1000分の1です

また
地球表面の赤道から北極点までの距離(10000Km)を1mとすると、
1nmは1円玉の直径(1cm)に相当します。
 
グラフの縦軸は光の強さです
面積が光の量に相当します

地表に届いた太陽光は
通過した大気の影響を受け
紫外線の量が少なく、
可視光線と赤外線の量が多いことがわかります
 
紫外線の量が少ないのはオゾンがあるためです
 
特に赤外線のグラフのところどころ歯っ欠けになっていますが、
そこは
大気中のおもに水H2Oと炭酸ガスCO2、酸素O2が
吸収したためです
 
人間の眼が反応する光
波長が約380~780nmの範囲の光線です
可視光線と言います
 
紫外線にも赤外線にも人間の視覚は反応しません
 
 
 
 
2.反射光

太陽光がリンゴの表面に当たります
リンゴの表面にある色素アントシアン等が
490~500nm(青緑)を中心とした光を吸収します
 
反射された光は吸収光を欠いた光です

りんごの反射光を分光測色計で測った結果です

 
出典:色々雑学⇒
http://www.konicaminolta.jp/instruments/knowledge/color/part2/04.html

グラフを見ると
緑・青の領域が最も吸収され
赤が最も反射されています

 
さて、光と色の関係を考えます

 
可視光線そのものには色がありません

「人間の視覚と脳が波長ごとに色を感じるのです」

可視光線の波長と人間が認識する色の関係は下図のようです

全体では無色あるいは白色と感じます

 
出典:可視光線の波長の長さ⇒ http://metalogue.jugem.jp/?eid=1247


もう一度言います
上図の可視光線の色に関して
 
「人間の視覚と脳が波長ごとに色を感じるのです」
 

3.眼・脳 
 
 
反射された490~500nm(青緑)を欠いた光が目に届き、
網膜に達します

網膜には視細胞があります






網膜の視細胞
出典:「知っておきたい色の話」⇒

 
視細胞の3種の錘状体細胞(青、緑、赤の錘体細胞)が
反射された490~500nm(青緑)を欠いた光から
それぞれ青緑赤の光に反応して
3つの電気信号に変えて脳におくります。

脳では
信号が
1次視覚野⇒視覚連合野⇒高次連合野
と伝わります
 
脳で初めて
りんごから反射した490~500nm(青緑)を欠いた光の
3つの信号が
組み合わせられて赤と認識されます

連合野で形の信号と組み合わされて
赤いりんごと認識します
 
実は脳に認識された赤は青緑の補色です
 
ものに吸収される光(色)反射光の色(脳が認識する色:補色)
の関係を下図に示します
 
               ・・・吸収光・・・・・・・・   反射光      
出典:スペクトルと補色⇒

 
物がみえるための情報が伝わる過程は






対象⇒網膜(視細胞)⇒1次視覚野⇒視覚連合野⇒高次連合野
でした
 

つまり

りんごが赤いのではなく
白色光の反射光が青緑の色を欠いており
人間の視覚と脳で赤く見えるということです

また
目と脳が反射光(補色光)と形他の信号を処理し
赤いりんごの映像を作っているともいえます 

まさに
「色は脳の中にある」
 
「美は脳の中にある」
です

私は
「りんごは青緑の光を吸収するのだから、
りんごの実体色は青緑だ
反射光によって赤く見えるだけ」

と言えると思っています

「青緑のりんごを
人は赤いりんごと思っている
赤いりんごは実体ではない」
のです













 

2012年10月23日火曜日

美は脳の中にある 2 Beauty is in the brain 2

 
 
前回、
「美は観る人の脳の中にある」
"Beauty is in the brain of the beholder."
と書きました
cf.「美は脳の中にある」⇒



まず物(リンゴ)が見える仕組みをたどってみましょう

出典:「知っておきたい色の話」


太陽(光源)の光がリンゴにあたって反射した光が
瞳孔⇒水晶体⇒硝子体を通り
網膜に焦点を結びリンゴの映像ができます

しかし、
未だ物が見えているわけではありません。
 

 
出典:レーシック医療
 
 
 
リンゴの映像(光)は網膜上の
絨毯状に並んだ1億個以上の視細胞(錘状体・桿状体)
に分かれて届きます
網膜の視細胞
出典:「知っておきたい色の話」


個々の光は
視細胞で電気信号に変換されて
視神経を通って
大脳の後ろ側にある
1次視覚野に伝わります

1次視覚野では
リンゴの形(輪郭)、色、運動などの
情報データーが抽出されます

抽出されたデーターが
視覚連合野に渡されます

視覚連合野では
りんごの形(輪郭)、色、運動に関する
視覚データーの高度な分析が行われ
ヒトに認知される状態になります

ここで初めて物(リンゴ)が見えた
と言っていいと思います




 
出典:「脳の高次機能」ERP総論
 
 

次に
高次連合野(側頭、頭頂、前頭の各連合野が関連)
に送られます

高次連合野では
リンゴの形(輪郭)、色、運動などの視覚情報と
触覚、味、香りなどの感覚情報
記憶された過去の知識
が総合的に組み合わされ(統合され)、
これは何だという認知・判断がなされます
これが真に見えたという状態です
 
次いで 
思い(好き、嫌い、おいしい、美しい、食べたいなど)を感じ
価値判断し
どうしようという行動(採って食べる)を決定します

運動野が指令し行動するわけです


 

ものが見えるためには
 


光が電気信号に変わり

対象⇒網膜(視細胞)⇒1次視覚野⇒視覚連合野⇒高次連合野

の過程を経るわけです


高山氏に寄れば、
脳の部門(野)間には相互作用があって、
いくつかは同時に動いている
とのことです

氏のモデルを示すと

 
以上をまとめると
 
「人間が観ているものは
自分の脳の中で再構築された映像である」
 
ということになります

"The thing which a human being watches
 is a picture rebuilt in one's brain"

 
 
引用文献:
・坂井建雄、久光正 「ぜんぶわかる 脳の辞典」成美堂出版
・筑波大学大学院 高山誉史氏 H10修士論文「製品形態に関する人間の認知的考察」
 
・シャープ 「知っておきたい色の話」 http://www.sharp.co.jp/aquos/technology/color/index.html
・出典:「知っておきたい色の話」